Faylay~しあわせの魔法
「……フェイレイさん」

「ん?」

「海を渡れるようになったから、ようやくリディルさんを探しに行けますね!」

なんとか明るさを取り戻して欲しくて、ヴァンガードはにっこりと笑顔を向ける。

しかしフェイレイはすぐに答えを返せなかった。

「……行くんですよね?」

縋るような瞳で見つめられ、フェイレイは顔を逸らして曖昧に微笑み、そして首を横に振った。

「な、何故ですか!?」

「……たぶん、探せない。どこを探しても見つからない。そういう場所にいるんだと思う」

「でも、どこかにはいるんですよね? たとえ見つけられない場所にいるんだとしても、どこかに手がかりがあるはずです。精霊たちが戻ってくれば、何か知っているかもしれないし……!」

それでもフェイレイは首を横に振った。

「探しちゃ駄目だ。リディルがそう望んでいるから」

あまりにも大きな力は、人を狂わせる火種となる。

それをこの世に残さないためにリディルは魔王と一緒に消えていった。もう争いを引き起こしたくなくて選んだ道だ。

その行動こそがこの世界を護ることになり、フェイレイへの贖罪の意味も含めている。

彼女の覚悟をフェイレイは受け止めなくてはならない。

けれど笑えないのは、その覚悟を受け入れられていないからなのだ。自分がこんなに弱い人間だとは思わなかったと、フェイレイは自嘲する。


「……なんですか、それ」

ヴァンガードは憤りを露わにした。

フェイレイの腕を掴み、ダン、と白い壁に押し付ける。

「それがリディルさんの望んだこと? 貴方一体、リディルさんの何を見てたんですか!!」

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