Faylay~しあわせの魔法
『リディル……何か、“思い出した”のか?』

アリアの質問に、リディルは小さく首を振った。

「……何も」

『そうか』

「え、何? 何で?」

『黙れ』

フェイレイにカッと鋭い瞳を向けて黙らせると、アリアはまたリディルに質問した。

『どうやって女王を召還した? 女王召還術は、教えていないはずだ』

「……そうなの?」

フェイレイがリディルを見る。リディルは頷いた後、床に視線を落としながら言った。

「どうして出来たのか分からない。でも……出来ると思ったから、やった」

『そうか……』

アリアはまたしばらく黙った後、声を低くして言った。

『お前たち、そのことは誰にも言うなよ』

「え? ……うん。なんで?」

『何でもだ。他に知っている者は?』

「いない……よな?」

振り返ると、ヴァンガードもリディルも頷いた。あの場にいたのは自分たちのパーティだけで、救援隊到着後もリディルは気を失ったままだったから、召還術は使っていない。

『ならば良い。決して口外するな』

「うん、分かった。けど……なんで?」

『二度も聞くな、馬鹿め。……とにかく、この事は他言無用だ』

「……了解」

何だか腑に落ちないものの、フェイレイはそれを了承した。リディルもヴァンガードも、何か聞きたそうな顔だったが、追求することはしなかった。
< 71 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop