Faylay~しあわせの魔法
フェイレイの腕を掴む手に力を込め、泣きながら全身で訴えるヴァンガードは、あの日のリディルを彷彿とさせた。

『しあわせになんて、なれない』

『この人と一緒に行く』

リディルはそう言っていた。

けれど。

ヴァンガードの言う通り。彼女は全身で哀しんでいた。それをフェイレイは間近で感じていたはずだった。

「この世界が駄目なら、どこでだっていいじゃないですか。探し出して、一緒にいてくださいよ。2人で、しあわせになって、くださいよ……」

ボロボロと零れ落ちる涙に引き摺られるように、ヴァンガードは下を向いて嗚咽した。

フェイレイはそんな彼の、向こう側を見ていた。

廊下の白い壁ではなく、更にその向こう。

あの日、燃えるような朝焼けの下で、震えるほど泣いていたリディルを。

「……ヴァン」

フェイレイの瞳からも、つ、と涙が零れ落ちる。

「ありがとうヴァン。目が覚めた」

ヴァンガードの水色の頭にポン、と手を置いて、フェイレイは微笑んだ。

「俺、リディルを探しに行く。絶対見つけ出す。……一緒に来てくれるか、ヴァン」

嗚咽しながら顔を上げたヴァンガードは、フェイレイの顔に以前のような力強く温かい笑みが浮かんでいるのを見て、泣きながら笑った。

「はい、もちろんです!」

ぐい、と手の甲で涙を拭い、頷く。

「絶対見つけましょうね! 貴方しかいないんですから、リディルさんの『勇者』は!」

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