Faylay~しあわせの魔法
「カインは妹姫を、それはそれは大切に想っていたそうですよ。私がヤキモチを妬くほどに、いつもいつも、リディアーナは元気にしているだろうか、無事でいるだろうか、と……いつも、いつも!」

ローズマリーの顔がだんだんと鬼のようになっていく。

ヤキモチを妬いていたのは、どうやら本当らしい。もしかして、リディルに少し意地悪だったのは、そのせいだったのだろうか……。

フェイレイとヴァンガードが震えながら見守っていると、ローズマリーの顔がコロッと優しく変わった。

「ですから、安心して一緒に帰っていらっしゃい」

「かえって怖くなったよ……」

フェイレイは苦笑した。

そうやって談笑する彼らのもとに、キャプテン・ブラッディがやってくる。

「そろそろ出航だ。荷物入れてきな」

「分かった。それじゃ、陛下、行ってきます!」

「ええ、気をつけて」

ローズマリーに手を振られながら、フェイレイとヴァンガードはタラップを渡って船の中へ姿を消した。

「船長、あの子たちをよろしくお願いしますね」

「任せとけ。……カイン様が早くお目覚めになられるよう、祈っていますよ」

「ありがとう……」

その後に、何か言いたそうにブラッディを見つめるローズマリー。ブラッディは少し居心地が悪そうに頭をかくと、話すように顎をしゃくって促した。

「本当は、貴方に皇宮に戻っていただきたいのです。アレクセイがいなくなった今、カインを精神的に支える方が必要で……貴方なら、適任です」

「……言われると思った」

ブラッディは苦笑しながら頭をわしわしと掻き毟る。

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