Faylay~しあわせの魔法
「王様って……謁見は夜だってさっき……」

「表向きはそうなっております。これは非公式会談となります。他の者には一切知られておりません」

「……アライエルの名誉に関わる内容だからですね」

ヴァンガードの言葉にユージンは頷き、そして前に進むように促された。

目の前まで進んだフェイレイとヴァンガードを視線だけ動かして交互に眺めた後、アライエル王は語りだす。

「これは、私の独り言である」

「聞いても知らん振りしろ、そして他言無用、ということですよ」

後ろからそっとユージンが囁く。

フェイレイ、そしてヴァンガードは頷いた。

「まずは『勇者』に謝ろう。もしも魔王との戦いでその血が『悪魔』に支配された場合、私はお前を闇に葬り去る決意をしていた」

軽く目を見開くフェイレイ。

「……それが、すべての真実を葬り去った我が国の使命であったろう」

「暗殺者として派遣されたのは私でした。すみません」

更に後ろからそう言われ、フェイレイは驚いてユージンを振り返る。知らないうちに命を狙われていたのか……。

「まあ、私ごときがあの力に敵うとは、とても思えませんでしたが……良かったです。貴方がその血に打ち勝つことが出来て」

「……王家の極秘内容を話す場に貴方がいるのは、そういうことですか」

ヴァンガードは納得して頷く。

イライザ姫でも知らなかった『勇者伝説』の内容を話す場に、一介の騎士であるユージンが同席することに、ヴァンガードは疑問を持っていたのだ。

連合軍が設立されて皇都へ進軍する際、『勇者』こそが世界を破滅へ導く悪魔であると知っていたアライエル王が、密かにユージンにフェイレイを見張らせていたのだろう。

「この話を知っているのは私と時期王位継承者セリーヌ、そしてイライザ、ユージン。この4人だけだ」

アライエル王は更に語る。

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