Faylay~しあわせの魔法
大きく息をしながら起き上がり、何の気配もなくなった森を見渡す。

「戦わない道……それがあるなら……」

フェイレイの目には今でも焼きついているのだ。

魔王が最後に見せた、哀しげな微笑が。

どう見たって悪いのは人の方なのだ。

ランスロットの口車に乗り、ティターニアを攫って世界を手中にせんとした人々がいた。それを隠そうとした人々がいた。魔族から見れば、人こそが悪。

剣を収めるのは人でなければならない。そして魔族たちへ精一杯の謝罪の気持ちを伝えなくてはならない。

それはフェイレイひとりでは無理だ。

世界中の人々に、分かってもらわなければ──。


誰に協力を仰げば一番良いのか、しかしそれは可能か、考えながら森を出ると待っていたヴァンガードに目を剥いて驚かれた。

「な、なんですかその怪我──!」

腕だけでなく顔や頭まで血だらけである。驚くのも無理はない。

「まさか魔族が!?」

「あ、まあ、うん……」

「それにしたって貴方がこんな怪我を負うなんて! すぐにアライエル王とギルドに連絡を……!」

「いや、大袈裟にしないでくれ」

「え?」

「連絡するなら、もう魔族と戦わない方法を考えたいと、伝えてくれ」

「なんですって?」

眉を顰めるヴァンガードに、魔族とは戦いたくないのだと伝えた。

出来るなら、人も精霊も魔族も関係なく、仲良く出来る世界を目指したいと。

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