Faylay~しあわせの魔法
「……ここで、待っててくれよ」

フェイレイは首から下げられた指輪をふたつ外し、持ち主のもとへ返してやった。

「必ずリディルを連れて戻るから」

両親が眠るこの場所で、新たに誓いを立てるフェイレイ。

そんな彼の背中を押すように、草原を風が強く吹き渡っていった。



「森も焼けちゃったんだな……」

飛行艇に戻るまでの間、辺りを見回していたフェイレイは呟く。

セルティアの象徴である国土全体に広がっていた尖った針葉樹林は、そのほとんどが焼けて真っ黒な炭となってしまっており、今も焦げた匂いが漂っていた。

セルティアにいた森の精霊たちは、みんな緑のとんがり帽子を被っていたのに。

(この光景を見たら、哀しむだろうな……)

この森を焼いたのは星府軍、そして魔族だ。


その魔族たちが、焼けた木々の向こうからフェイレイたちを伺っていた。

その視線に気づき、そちらへ視線を向ける。

殺気を放ってはいるものの、今は襲い掛かってくる気配はない。フェイレイも絶対に手は出さないと決めていたので、ただジッと見つめ返した。

「フェイレイさん……」

ヴァンガードの声がしたが、動かないようにと腕で制する。

暗闇の中で光っていたいくつものギラつく瞳たちは、やがてフッと消え失せる。

だがその代わりに、背中に黒い羽を生やした人型の魔族たちが、音もなく空から舞い降りてきた。

「お前が『勇者』だな」

バサリと羽音を立て、魔族たちはフェイレイたちを取り囲む。

「私たちとは戦わないと言ったそうね」

「誰よりも我らを葬り去ってきたお前が、どの口でそんなことを言うのか」

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