Faylay~しあわせの魔法
「終わらせる?」

魔族のひとりが冷たい瞳でフェイレイを見下ろした。

「では、お前が終わらせればいいだろう」

後ろにいる魔族からそう声がかかった。

「猊下は消えた。精霊王も消えた。お前も消えろ。人の代表として、その命を我らに捧げろ! そうすればもう人には手を出さないでやる!」

黒い羽が振り上げられた。

それでもフェイレイは動かなかった。

迫り来る衝撃に備え、グッと歯を食いしばった。

「フェイレイさん!」

ヴァンガードが静止する前にドスッと鈍い音がして、背後から黒い羽が鋭く身体を貫いた。

「フェイレイくん!」

羽が引き抜かれるのと同時に、血が噴水のように噴き出す。

「ほう、避けなかったのか」

フェイレイを貫いた魔族が、涼しい顔で羽を動かし、血を吹き飛ばす。

「止めてください!」

ヴァンガードは魔銃を構えようとしたが、それをフェイレイの血だらけの手が止めた。

「……終わらせる、んだ」

歯を食いしばり、吐く息を震わせながらフェイレイは魔族を見上げた。

「こうやって、お互いを想いながら、やり返すから……哀しい歴史が繰り返される。……終わらせる、ここで」

がくんと膝の力が抜けて、地面に崩れ落ちる。

「フェイレイさん!」

「ヴァン、何があっても、絶対に魔族には手を出すな。ここで終わりにするんだ」

「何言ってるんですか!」

「もう終わりにする。魔王みたいに、あんな、哀しい顔を……誰にも、させたくない……!」

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