Faylay~しあわせの魔法
魔族たちは血を吐くようなフェイレイの想いに、ジッと耳を傾けた。

そして。

「良い覚悟だ」

黒い羽を振り上げる。

「やめてください!」

ヴァンガードはフェイレイの前に立ち塞がり、両手を広げた。

「避けろ、ヴァン!」

「避けませんよ! だって貴方はリディルさんを助けに行くんです! まだ死ねません……死なせませんよ!」

今にも振り下ろされようとしている黒い羽を見上げ、ヴァンガードは小刻みに震える体を抑えるようにグッと歯を食いしばった。

その彼の服を掴み、後ろにいるタウへ投げつける。

「フェイレイさんっ!!」

叫ぶヴァンガードをチラリと見やった後、風を感じて視線を前へ戻す。

黒い羽は振り下ろされた。

あとは貫かれるだけ。

フェイレイは覚悟を決めて目を閉じた。


《駄目だよ!》


そのとき、かわいらしい声が響いて、辺りに光がぽう、と灯った。

《この人は、リディルの大切な人》

《傷つけては駄目》

《貴方たちも、大切な人を失う哀しみ、分かってるはず》

《争いをやめたい、この者の心に嘘はない。信じてやってくれ》

フェイレイの周りに色とりどりの光が飛び交う。精霊たちに違いはないだろうが、姿はまったく見えず、小さな丸い光だけが次々と現れた。

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