Faylay~しあわせの魔法
地面から噴き出すように次々と現れた小さな丸い光は、フェイレイたちを、魔族たちを包み込んでいく。

「精霊たちか……」

魔族たちは顔を顰め、羽を収める。

《もう、やめよう。リディル、言ってた》

《戦わないで欲しいの》

「先に仕掛けてきたのはそちらだ」

魔族は吐き捨てるようにそう言う。

《傷つければ、哀しむ者がいる》

丸い光は、ふわりと風に乗り、ヴァンガードとタウの周りへ集まる。

小刻みに震えながら今にも泣きそうなヴァンガードと、彼を後ろから抱きとめながら、顔を歪めているタウ。

2人の顔を見つめていた魔族たちは、顔を逸らし舌打ちした。

「命拾いしたな、『勇者』よ」

バサリと羽音が響き、魔族たちは青い空へと舞い上がり、やがて見えなくなった。

それに息をつく間も無く、ヴァンガードがフェイレイに駆け寄り、タウはギルドへ連絡を取り、医療施設に収容可能か確認を取る。

「まったく、何やってるんですか! 怪我しないでくださいって言ったばかりですよ!」

ドクドクと血の溢れてくる腹部と背部に、リュックの中から取り出したタオルを押し付ける。

こんなものでは止血にもならない。

「考えなしに行動するのやめてくださいよ! 本当に、怒りますよ!」

そう言いながら、ヴァンガードの目には涙が浮かんでいる。

「ごめ、ん……」

謝るフェイレイの瞳に、ぼんやりと光の粒が見える。

それらからはほとんど力を感じない。フェイレイの危機を感じ、自分たちが消えるのを覚悟で出てきたのだろう。

光は徐々に弱っていき、ぱちんと弾けるように消えていく。

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