Faylay~しあわせの魔法
それから二ヶ月ほどの時が過ぎる。

怪我を負ったフェイレイはセルティアギルドの医療施設に入れられたきり、完治するまでは外に出してもらえなかった。

その間、セルティアギルドの顔見知りの傭兵たちばかりでなく、各地、各国からのお見舞いが絶えなかった。

「いいですか。貴方に何かあったら哀しむ人がこーんなにたくさん、いるんですからね!」

ヴァンガードにはこの二ヶ月、届く見舞いの品を見せられながらみっちりそう言い聞かせられた。

フェイレイは大人しくはい、はいと頷く。

くどくどと説教をするのは、フェイレイに無茶をさせまいとする彼の優しい心遣いなのだろうと思い、耐えた。

しかし……。


「そろそろリディルを探しに……」

「駄目です」

「えー」

「貴方が元気でないと、みんなが心配すると言いましたよね?」

「もう元気だから」

「そんな姿で逢いに行ったらリディルさんが心配します。ちゃんと元気な姿になってから、笑顔で迎えに行くんですよ」

「……うう、笑顔が怖い、ヴァン……」

何だか最近、ヴァンガードにローズマリーの面影を見るフェイレイである。

それはそうだ。

ヴァンガードはフェイレイに言うことを聞かせるために、ローズマリーに極意を伝授されていたのだから。

< 744 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop