Faylay~しあわせの魔法
フェイレイの身勝手な行動に心底頭にきていたヴァンガードは、ローズマリーに相談していた。

通信機の映像の中の彼女は、とても物憂げな表情で溜息をつく。

『魔族とそんなやり取りを。それはヴァンくんも心配でしたわね』

分かりましたわ、とローズマリーは頷いた。

『良いですか。まずは貴方をとても心配しているのですと、心から相手に伝えることから始めます』

「はい」

ヴァンガードはメモを取る。

『それでも相手が言うことを聞きそうになかったら……まずは聖母のごとき微笑を浮かべなさい』

「はい」

『チクチクと言葉で攻撃しつつ、聖母の微笑は決して消してはいけません』

「はい」

『それでも反抗するようなのであれば』

「はい……」

メモを取り、顔を上げたヴァンガードはビクリと肩を震わせた。

ローズマリーの微笑みが心臓が止まるほど美しく輝いている。

『いい加減言うこと聞かねぇと、てめぇの×××磨り潰してやんぞ、ゴラァ!』

(ヒイイイイ!)

ヴァンガードは目を剥いて恐れ慄いた。

『……というようなことを心の中で思いながら、あくまで聖母の微笑で迫るのですよ』

にこり、と美しい微笑みでローズマリーは言った。

「へ、陛下……いつも、そんなことを思いながら脅しをかけていたのですか……」

貴族生まれの彼には到底思いつかない恐ろしい言葉であった。

まさか、惑星王にもそんな風に迫ることがあるのか!?

……ヴァンガードは怖くて聞けなかった。

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