Faylay~しあわせの魔法
エインズワース家は、古来より優秀な精霊士を輩出してきた名門。

その中でもヴァンガードの祖父は、惑星王のお膝元である皇都で宮廷精霊士として活躍した。

一族は繁栄を極めていた。

その名を皇都で知らぬ者はいないほどに。

「祖父の力を受け継いだ父も優秀な精霊士でした。ですから、僕もそうなるだろうと父は期待していたんです。でも、僕は……」

ヴァンガードは膝の上でギュッと拳を握り締めた。

「精霊士には、なれませんでした」

物心ついたときから、厳しく……厳しすぎるほどに精霊召還術を教え込まれてきた。けれども、ヴァンガードは精霊士になれるほどの魔力を示せなかったのだ。

「父はそんな僕に落胆し、見向きもしてくれなくなりました。……その後、ギルドの魔銃士養成学校に入って、死に物狂いで頑張りました。最年少で候補生に上がれたら認めてやる。そう言われました。でも」

ヴァンガードはフェイレイに目をやった。

それに気付いて、フェイレイも視線を向ける。ヴァンガードはほんの少し、憎しみの篭った目をしていた。

「……貴方を越えることは、出来ませんでした」

「……同じだろ?」

「一ヶ月! ……一ヶ月、貴方の方が早いんです。12歳2ヶ月で候補生になったでしょう!」

「そ、そうだったかな」

「そうですよ。……父は今度こそ、僕に興味を失くしたようです。エインズワースの名を汚す落ちこぼれなんか、いらないんですよ」


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