Faylay~しあわせの魔法
水車小屋の見える広い草原に立ち、まずはリディルの顔を思い浮かべ、やる気を高める。

そして精霊王を召喚したときのイメージを必死に脳内から引き摺り出し、唸りながら精霊王の名を心の中で呼び続ける。

(道は拓かれている)

きっと辿り着ける。

絶対辿り着ける。

リディルのもとへ。


魔力の解放の仕方を知らないフェイレイは、うまく喚び出すことは出来ない。

精霊王を呼び続けて数時間、橙の太陽に照らされた草原に、白い霧が漂い始めた。

「霧が出てきたね」

辺りを見回しながらタウがそう言った。

「……この霧」

ヴァンガードはこの霧が普通のものではないことに気づく。

ひやりと肌を滑っていく真っ白な霧は、触れるたびに身体の中の気が浄化されていくような気がする、とても神聖なもののように思えた。

それが突然、鋭さを増す。

強い可視光線を浴びたように目が眩み、平衡感覚も失って草の上に倒れた。

だがフェイレイは立っている。

拓かれた道の向こうから差す光を見つめ、精霊王の気配を感じ取る。

「やった! ヴァン、タウさん、行けそう!」

嬉々として振り返ったフェイレイだが、草の上に蹲る2人の姿を見つけ、サッと顔を強張らせる。

「大丈夫か?」

「え、ええ……あまりにも、強い力で……」

弱々しい声のヴァンガードに、フェイレイは悟る。

この先へは、一人で行かなくてはならない。

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