Faylay~しあわせの魔法
フェイレイはあっさりと、胸の中にわだかまる靄を取り払ってくれた。

けれど……。

「それでも、僕は貴方に勝てなかった。……頑張ったのに」

誰に何を言われようと、自分の限界まで努力したつもりだったのに、と項垂れる。

「そりゃそうだろ」

あっさりとそう言われ、ヴァンガードは思わず顔を上げる。

「俺も頑張ったんだ。リディルの『勇者』になるためになっ。誰よりも、強くなるために」

胸を張って、自信に満ち溢れた笑顔でそう言われると、何だか肩の力が抜けてしまった。

「……なんですか、『勇者』って。御伽噺みたいに」

「『勇者』は人の心を救える強くて優しい、凄い人だぞ! 俺の目標だ!」

「へー、そうですか」

「でもドラゴン倒せなかったからな。もっと努力しないと駄目だって分かった。まだまだ頑張るぞ! ヴァンにも負けてられないしな」

「ドラゴンを1人で倒そうとする人なんて、貴方くらいですけどね」

ヴァンガードは呆れながらも、笑っていた。

「……僕も、負けませんよ」

そう呟いて、ベッドに転がる。

高い天井から釣り下がっているシャンデリアを眺め、ヴァンガードはスッと笑みを消した。

今日の出来事を振り返って、聞いておかなければならないことがあった。

「お聞きしたいのですが」

「ん?」

「リディルさんが、川から流れてきたときのこと」

「あ、そうだったな、約束してたもんな」

フェイレイはそう言うと、ベッドにゴロンと転がった。


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