Faylay~しあわせの魔法
けれど遠距離から連携を取ることで、結果的にフェイレイもリディルも自分の力を高めることになった。

『セルティアの英雄』と呼ばれ始めたのは、その後だ。

初めはアリアとランスの息子だからと、単に名を受け継いだ形であった。

だが人々は徐々に、その実力を認め始めた。

それもこれも、リディルの力あってのことだ──。



階段を一段上がろうとして、足がよろけた。

そのまま壁に肩を打ちつけ、ズルズルと座り込む。

朦朧とした意識の中に、リディルとの思い出が駆け巡っていた。



いつかリディルと家庭を持てたらいいなと勝手に妄想し、実現させるためにお金を貯め始めたこと。

ヴァンガードからリディルの出生の秘密を聞かされ、焦ったこと。

指輪を贈って抱きしめたこと。

星府軍に追われだしたこと。

誤解を招いて頬を叩かれたこと。

星空の下の草原で、後ろから抱きつかれたこと。

アライエルでプロポーズしたこと。

初めてキスを交わしたときのこと──。


走馬灯のように巡る思い出に、フェイレイは小さく呟く。

「なんだ……俺、死ぬのかな……」

壁にもたれるように倒れたまま、身体が動かない。

< 784 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop