Faylay~しあわせの魔法
同じような白くて丸い光が、闇の中をふわふわとやってきた。

コツ、コツ、と硬質な床を歩く靴音が響き、まあるい光はフェイレイの指輪目指してやってくる。

コツ、と靴音が止まった。

何も見えない闇の中から、リディルの姿が浮き上がる。

リディルは目を閉じたまま動かなくなったフェイレイを見下ろし、哀しげに瞳を揺らしていた。

「フェイ……」

屈みこんでフェイレイを抱き起こし、頭を膝に乗せる。

「フェイ、無茶させて、ごめんね……でも、私……ここから出ることは、出来ないよ……」

そっと赤髪を撫で、声を震わせるリディル。

震える指先からは淡く白い光がゆらりと立ち上がり、フェイレイの身体を癒していく。

そしてゆっくりと赤い髪から手を引いた。

このまま離れていこうと……した。

けれどその彼女の細い手を、フェイレイの大きな手が掴む。リディルの翡翠の瞳が見開かれた。

「……やっと、逢えた」

フェイレイはリディルに微笑みかけた。

「帰ろう。迎えに来たんだ」

リディルは小さく首を横に振る。

「……行けない」

「どうして?」

「だって……」

きゅっと唇を噛むリディルを見上げ、彼女の手を握り締める。

「リディル……魔王は?」

「……いつの間にか、いなくなってしまったの」

リディルは長い睫毛を伏せ、心配そうに呟いた。

魔王はリディルにも内緒で、フェイレイを助けに来てくれていたのだ。心配をかけたくなかったのだろう、優しい彼は……。

「魔王は、俺を助けに来てくれたんだよ。魔王に助けられなかったら、俺、ここまで来れなかった」

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