Faylay~しあわせの魔法
「アルトゥルス、が……?」

「そうだよ。魔王は、ホントに、ティターニアが好きだったんだな……」

はあ、と一息つき、フェイレイはもうひとつ、ティターニアへの伝言を伝える。

「精霊王からも。しあわせになって欲しいって。……魔王も、精霊王も、みんなしあわせを願ってた。……その想い、ティターニアに、届くといいんだけど」

「……駄目だよ」

リディルはまた首を振る。

「私、しあわせになっちゃ駄目なの。たくさんの人を傷つけた。だから……駄目」

頑なに拒むリディルの頬に手を伸ばす。

何かを堪えるように震えているのが、指先から伝わってきた。

「……なあ、リディル?」

フェイレイは優しく語り掛ける。

「俺、ここに来るまでに、たくさんの人に助けられたよ。精霊王が道を作ってくれて、魔王が導いてくれて……この世界には、父さんと母さんもいたよ。それから、リディルのお母さんも……」

「……お母、様?」

「そうだよ。……何でだと思う? みんなの想いが、リディルの心にあるからだよ」

すべてを拒絶する世界なのに。

フェイレイを助けてくれたのは、温かい手。優しい笑顔。

「リディル=カーヴァンスは、みんなの『しあわせになって欲しい』っていう、想いの欠片で出来てるんだ。だから俺は、辿り着けた」

リディルのハニーブラウンの髪を耳にかけ、後頭部を撫でてやる。

「ここに来る前に、惑星王にも会った。ローズさんにも……ナミさんや、ハルカさんや、タウさん、ヴァン……。他にも色んな人が、リディルを心配してた」

ふっとフェイレイは笑みを広げる。

「知ってた? ヴァンは意外と泣き虫なんだ。帰ってやらないと、また泣き出すかも」

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