Faylay~しあわせの魔法
「……なんて、そこで終わりにしたりしませんからね」

ヴァンガードは長くなった水色の髪を後ろでひとつに結わえ、リュックを持って振り返った。

「本当に行きますの?」

ローズマリーは藍色の髪をした小さな男の子を膝に抱き、椅子に座ったまま問いかけた。

「ええ。思い出したんです。あの人、方向音痴なんですよ。狭い戦艦の中ですら方向が分からなくなるんですから……きっと迷子になってるんです」

「それも考えられなくはありませんけれど……」

「ばーん、おでかけぇ~?」

ローズマリーの膝に乗っていた子供がそこからぴょんと飛び降りて、ヴァンガードに駆け寄ってきた。

「ええ、殿下。私は少しの間、旅に出ます」

「えー、るーもいくぅ~!」

「ルドルフは行けませんよ」

ローズマリーは椅子から立ち上がり、子供を抱き上げる。

「母上と父上と一緒に、お留守番です」

「ええ~、いやぁ~ん!」

ルドルフはぷっくりと頬を膨らませ、ジタバタと暴れる。

「ルドルフ殿下。私の分も、陛下たちをお護りくださいね。……本当は、このまま旅立つのも心配なのですが」

「それは心配いりません。カインのことは、私が命をかけて護りますもの」

ローズマリーはにこりと微笑む。それを見て、ルドルフも右手を突き上げた。

「るーもちちうえ、まもるぞ~! あんしんしてくだしゃい、ははうえっ!」

「まあ、頼もしい。さすが次代の惑星王ですわ」

「殿下が護ってくださるのなら、このヴァンガードも安心です」

小さな騎士に、ローズマリーとヴァンガードは微笑みかける。

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