Faylay~しあわせの魔法
カインは魔族との和解を実現させるため、3年かけて皇宮の議会を説得した。

各国首脳会議を行うというところまでようやくこぎつけたのだが、その裏で反対派の者たちによるカイン暗殺計画が持ち上がっているらしいことが分かったのだ。

「絶対に死なせはしませんわ。あの人こそ、皇です」

ローズマリーの言葉にヴァンガードも同意し、深く頷く。

「惑星王や皇后陛下の負担を減らすためにも、必ずフェイレイさんとリディルさんを探し出してきます。絶対に……この世界のどこかにはいるはずなんです」

フェイレイが消えてから一週間ほど経ったあの日。

世界中の誰もが塔の崩れる音を聞いた。

あれはフェイレイがリディルのもとに辿り着き、彼女の心を救ったという印に違いない。

けれど、待てども待てども一向に帰って来ない。

約束を破るような人たちではないことは知っている。だから絶対に帰ってくる。そう、信じてはいるのだけれども……。

3年という月日は、若いヴァンガードには長すぎる時間だった。

もう待てない。

伝説のように、しあわせにしているだろうなんて勝手に思い込んで、暢気にしてはいられない。

こっちから探しに行こう。そしてちゃんとしあわせになったのか見届けよう。そう決心した。

「僕、あのときのフェイレイさんより身長伸びたんですよ。どっちが大きいか、決着をつけないといけません」

そんなことを言うヴァンガードに、ローズマリーは噴き出した。

「そういえば、そんなことで言い争っていましたわね、貴方たち。……それに、どのくらいリディルが綺麗になったかも、見てみたいのでしょう?」

「……そ、そこは、もちろんです」

ぱっと赤くなる頬は、まだリディルのことが心に残っている証拠だった。

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