Faylay~しあわせの魔法
その視線の先にいた萌葱色のコートを着た少女、リディルは、翡翠色の瞳をゆっくり閉じて、ひとつ息を吐いた。

それからゆっくりと振り返り、兵士たちに護られるようにバルコニーの後ろで事の顛末を見守っていたこの国の王に目を向けた。

「すべて、終わりました」

それを聞いた壮年のセルティア王は、目を細めて頷いた。

「よくやってくれた。これで当面、魔族も現れることはないだろう」

リディルが静かに頷くと、周りにいた兵士たちからも安堵の声が漏れた。

「これで民の心も穏やかになる。しかし……」

王は長いローブを引き摺り、バルコニーから玉座の間へと踵を返した。

「近頃、魔族が我らの居住地に入り込む頻度が高すぎる。これについては……精霊はなんと言っているのか?」

王は『精霊士』であるリディルに答えを求めていた。

リディルはジッと王の顔を見た後、眩しく輝きだした城下町を見やりながら答えた。

「わかりません。確かに、精霊たちは最近、落ち着きがないけれど」

「……そうか」

王は深い溜息とともに、玉座に腰を下ろした。

「……すみません」

「いやいや、良いのだ。そなたたちは良くやってくれた。剣士とともに我が城でゆるりと休んでゆくが良いぞ」

「いいえ、次の任務がありますので、これで失礼します」

リディルはちょこんと小さな頭を下げると、サッとコートを翻し、御前を去っていった。


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