Faylay~しあわせの魔法
10年前、世界は天変地異に襲われていた。

大雨、洪水、高波、竜巻、地震……あらゆる災害が人々を襲った。

原因は明らかにされていないが、その異常気象が起こる前、魔族の動きが活発になり、ギルドへの派遣要請が絶えなかった。……今のように。


フェイレイの住んでいたセルティアの国境沿いにある小さな村も例に漏れず、大雨が続いていた。

普段は踝ほどまでしかないかわいらしい小川は竜のように暴れ、傍の田園を次々に呑みこんでいった。

父や母が近所の人達と一緒に大騒ぎしているのを、幼いフェイレイは不思議そうに眺めていた。

「ケーラばあさんの家が呑みこまれそうだ! ランス、力を貸してくれ!」

近所の人が飛び込んできて、父のランスはコートを着込むとすぐに飛び出していった。

「フェイ、決して外に出るんじゃないぞ。窓にもしっかり鍵をかけてな」

その頃まだギルドの支部長ではなかった母アリアも、フェイレイにそう言い聞かせると外に飛び出していった。

「うん」

フェイレイはそう返事をすると、2階にある自分の部屋のベッドに座り、手持ち無沙汰に足をブラブラさせていたのだが。

大粒の雨が叩きつけられている窓が、がしゃん、と激しい音を立てたので、フェイレイはビクリと肩を震わせ、恐る恐る窓際に寄り、目を凝らして暗い外を眺めた。

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