Faylay~しあわせの魔法
がしゃん!

また窓ガラスが大きな音を立てた。

雨粒ではない何か大きなものが、ぶつかってきているようだった。

なんだろうと不思議に思いながら、鍵を開けて窓に手をかけると、風で窓が飛ぶ勢いで開き、そして何かが顔面に激しくぶつかってきた。

「ぶへっ」

痛みで驚き、後ろに引っくり返る。

開いた窓から雨が吹き込んでくる中、何がぶつかってきたのかと『それ』を両手で鷲づかみにして、顔から引き剥がした。

「……リーブ?」

それは、川の精霊リーブだった。

小さな小川の精霊は、幼い少女の姿で、水色のおかっぱ頭をしていた。

丸々とした大きな水色の瞳から、ボロボロと大粒の涙が流れている。

「どうしたの? 川のお水いっぱいで哀しいの?」

フェイレイの問いかけに、リーブはただ泣くばかりだった。困ったフェイレイは起き上がり、ゴウゴウと吹き荒れる暗い嵐の外に目を向けた。

ざわざわしていた。

精霊たちが騒いでいる。

いや、この異常気象が起こり始めてからずっと、精霊たちは騒いでいたけれど。もっと、別な何かが。

吹きかかる雨を気にすることなく、窓から身を乗り出して辺りを見渡す。

何かが起きている。誰かの声がする。

誰かが──泣いている。

そう感じて耳を済ませていると。

嵐の音の中、静かに響く声が聞こえてきた。


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