Faylay~しあわせの魔法
「みんな、助けて欲しいんだね」

クランは頷くと、ひゅん、と飛び退った。顔を上げると大きな木があり、長い枝を川の方へと伸ばしている。

「あれに登ればいい?」

精霊たちは頷いた。

フェイレイは雨に濡れて滑る幹を、歯を食いしばって登っていった。

細くてしなる枝を慎重に進み、流れてくる白いものに手を伸ばした。けれども掴み損ねてしまい、白いものはあっという間に流れていってしまった。

だから。

フェイレイは川に飛び込んだ。

氾濫した川がどのようなものか、幼い彼には分からなかったのだ。

抗えない力で押し流され、身動きがまったく取れなかった。

それでも生きる本能とでもいうのか、フェイレイは手足を動かして濁流から顔を出し、先に流れていった白いものを探した。

そしてそれを見つけると、バタバタと暴れながらそれを掴んだ。

掴んだ瞬間に濁流に呑み込まれて川の底に沈みかけたが、リーブが力を貸してくれたのだろう、なんとか浮上することが出来た。

再び顔を出すと、遠くを走る両親の姿を見つけた。

「父さ──ん!!」

声の限り叫ぶと、ランスが立ち止まったのが見えた。

「父さ──ん!! ここ、だよ──!!」

それが息子の声だと気付いた2人は、川の中に流れるフェイレイを発見し、目を丸くして怒鳴りつけた。

「な……何をやってるんだ、お前は──!!」

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