Faylay~しあわせの魔法
そう言いながら2人は近所の人と一緒に駆けてきて、ロープを腰に巻きつけたランスが飛び込んで、助けてくれた。

「馬鹿かお前は! 外に出るなと言っただろう! こんな嵐では、精霊たちが怯えて力を貸してはもらえんのだぞ! 父さんがいなかったら死んでたんだぞ!」

アリアは怒鳴りながらフェイレイを抱きしめた。

それがあまりにも苦しくて、フェイレイはジタバタと暴れた。

「母さん、それより、その子はっ?」

フェイレイが掴んでいたのは、同じ年頃の少女だった。青白い顔色をしていて、ぴったりと瞼は閉じられている。

「助けてって言ったんだ! 大丈夫だよね? 生きてるよね?」

アリアはゴチーンとフェイレイの頭に拳骨を落とした後、少女へと目を向けた。

「……何とも言えん。酷い怪我だ」

どこから流されたのかは分からないが、少女は全身傷だらけだった。

「水は飲んでいないようだ。何とか助けてみよう」

村の医者がそう言うと、診療所へと連れて行った。

だが、少女の状態は深刻で、この村の設備ではどうしようもなかった。精霊たちが怯えるばかりで、力を貸してもらえない今は。

そこで、少女はアリアの務めるセルティアギルドの医療施設に運び込まれた。

フェイレイもそこについていき、少女が目覚めるまでの間、ずっと寄り添っていた。

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