Faylay~しあわせの魔法
「……それで『勇者』なんですか」

ベッドに寝転がりながら話の顛末を聞いていたヴァンガードは、納得して呟いた。

「そう。俺は『勇者』になって、リディルを護る!」

同じくベッドに寝転がりながら、フェイレイは力強く言う。

「まあ、子供の夢みたいな目標ですけど、頑張ってくださいよ」

半分呆れながらそう言うと、フェイレイは「おう!」と元気良く返事をした。

この人には嫌味も通じないらしいと軽く溜息をつきながら……ヴァンガードはジッと天井のシャンデリアを眺めた。

「リディルさんを託すって言った人、誰なんでしょうね」

「うん、俺も今の今まで忘れてたけど。誰だったんだろう。精霊の誰かかな?」

「そうですね……」

ヴァンガードはそう言いながら、湧き上がってきた疑問と、ある仮説を頭の中で整理していた。

言うべきか、この胸に止めておくべきか。

一瞬だけ迷った後、口を開いた。

「リディルさんの記憶って、全然戻ってない、んですよね?」

「たぶん」

「……そうですか」

「何?」

フェイレイは身を起こしてヴァンガードを見た。

「いえ……ちょっと、ある仮説が、出来たんですけど……」

「何?」

「……仮説、ですよ? ……リディルさんには言わないで下さいね」

「うん、分かった」
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