Faylay~しあわせの魔法
「魔族に力を与えるほどの『悪意』を人間が持ったってことですよ。……その『悪意』を生み出したのが……『皇家』です」

フェイレイは振っていた首をピタリと止め、目を丸くしてヴァンガードを見た。

初めて聞く話の上に、この惑星を治めるべき皇家が悪意を生み出すなど、信じられなくて。

「10年前、皇都ではクーデターが起こっていたんですよ。皇帝陛下が崩御されて。……起こしたのは当時の宰相。そして、その宰相に担ぎ出されたのが、今の惑星王の腹違いの妹君。……当時7歳でした。生きていれば……今は、17歳」

「生きていれば?」

「皇女は10年前に、行方不明に」

フェイレイとヴァンガードはジッと見詰め合った。

しばらくそのまま固まっていた2人は、やがて同時に大きく息を吐き出した。

「まさか」

「……そうですよね」

と、一度は姿勢を崩したものの、ヴァンガードはまた表情を引き締めた。

「でも」

「何!」

フェイレイはやけに力を入れて聞き返した。

「支部長は、何故、誰にも言うなと?」

「……あ」

「この仮説が正しいのなら……支部長は知っているんですよ。リディルさんの本当の名前を」

「けど、リディルは身元不明だからウチで預かったんだ。もし皇女だったら、すぐに皇都に……」

「……そうですね。でも、支部長がリディルさんを可愛いと思っていたというのなら、それも頷けます。だって……利用されていたとはいえ、皇女はクーデターの首謀者です。皇都に戻されれば……死刑ですよ」

ヴァンガードの仮説は、フェイレイに大きな衝撃を与えた。

そしてそれは、仮説ではなく……。

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