Faylay~しあわせの魔法
ギルドの支部長室で、アリアは一人、パソコンのモニターを眺めていた。
そこには、ここ数ヶ月の魔族の増加率と、各地の被害状況などが記されていた。
「10年前と、何もかも同じ……」
このままでは精霊たちが暴れだす。天変地異が巻き起こる……。
『また皇都なのか』
その声に、アリアはモニターから視線を外した。
その横に置いてある通信機は、夫であるランスの姿を映し出していた。
元剣士のランスは屈強そうながっしりとした体躯をしていたが、至って穏やかな、気の良さそうな顔をしていた。目元などはフェイレイに良く似ている。
「ああ。……皇都から、次々に住民が逃げ出している。数年前から増税が半端ではないと聞いてはいたが。……今度は魔族が住みつきだしたそうだ」
『皇都に! ……一体、何故……』
「噂では、惑星王が呼び込んでいるのだとか」
『惑星王が?』
「何故そんなことをしているのか、私には分からん。重要なのはこっちだ。……長年牢に入れられていた宰相が、先日処刑された。民衆の目の前でな」
『──リディルは!』
「今は、フェイと一緒に任務中だ。エスティーナにいる」
夫婦はそれきり、押し黙った。
長い間、互いの視線を合わせようともせず、沈黙に耐え続けた。
皇都で何が起きているのだとか、惑星王が何を考えているのか、そんなことは夫婦の考えの及ばない所にある。
そして、娘として育ててきたリディルにも、関係のないこととして済ませてやりたかった。
そこには、ここ数ヶ月の魔族の増加率と、各地の被害状況などが記されていた。
「10年前と、何もかも同じ……」
このままでは精霊たちが暴れだす。天変地異が巻き起こる……。
『また皇都なのか』
その声に、アリアはモニターから視線を外した。
その横に置いてある通信機は、夫であるランスの姿を映し出していた。
元剣士のランスは屈強そうながっしりとした体躯をしていたが、至って穏やかな、気の良さそうな顔をしていた。目元などはフェイレイに良く似ている。
「ああ。……皇都から、次々に住民が逃げ出している。数年前から増税が半端ではないと聞いてはいたが。……今度は魔族が住みつきだしたそうだ」
『皇都に! ……一体、何故……』
「噂では、惑星王が呼び込んでいるのだとか」
『惑星王が?』
「何故そんなことをしているのか、私には分からん。重要なのはこっちだ。……長年牢に入れられていた宰相が、先日処刑された。民衆の目の前でな」
『──リディルは!』
「今は、フェイと一緒に任務中だ。エスティーナにいる」
夫婦はそれきり、押し黙った。
長い間、互いの視線を合わせようともせず、沈黙に耐え続けた。
皇都で何が起きているのだとか、惑星王が何を考えているのか、そんなことは夫婦の考えの及ばない所にある。
そして、娘として育ててきたリディルにも、関係のないこととして済ませてやりたかった。