Faylay~しあわせの魔法
フェイレイの指差した島は、目を細めても細めても、霞んだ点にしか見えないほど遠くにあった。

「……一人で行ってください」

ヴァンガードは顔を引きつらせた。

「ヴァンも体力つけた方がいいかと思ってさ。お前、細いから」

「貴方も大して変わりませんよ!」

気にしていたのか、珍しく怒鳴り返すヴァンガード。

「全然違うだろ! 俺の方が身長高い!」

「え、身長の話ですか? 身長だってさほど変わりませんよ」

「俺の方がデカい!」

「まあそうですけど。たかだか15センチじゃないですか。そのうち追い抜きますからね」

「俺はまだ成長期が来てないんだ! 追い抜かせないぞー!」

なんて熱く語っているうちに、リディルに馴れ馴れしく話しかけてくる南国の男たちを発見し、「コラー!」と叫びながら飛んでいく。

「……忙しい人ですね」

ヴァンガードはヤレヤレ、と首を振った。



そして、水着を見れなかった哀しさから海に飛び込んでいったフェイレイの代わりに、ヴァンガードが『男避け』としてリディルの隣に置かれた。

風にはためくカラフルなビーチパラソルの下、無言の時が続く。

リディルはフェイレイと違って無口だ。おまけに無表情なので何を考えいてるのか分からない。

ヴァンガードはどう話しかけていいのか一人悩んでいた。
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