Faylay~しあわせの魔法
「……じゃあ、練習する?」

リディルの言葉に、ヴァンガードはひとつ瞬きをした。

そして想像してみる。

17歳の少女に、12歳の少年が両手を引かれ、海の中をバタバタと泳ぐ練習する様を。

「……いえ、次の機会に、します」

何だか物凄く恥ずかしくなってしまい、ヴァンガードは俯いた。

「そう?」

「はい」

そしてまた無言の時が続く。

沈黙が痛いと思いながら、ヴァンガードはチラ、とリディルを見やった。

人形のように可愛かったと、フェイレイは言っていた。確かに、そうだと思う。

大きな瞳と、小さな鼻と口。色白だが、ほんのり頬は桃色に染まり、愛らしい。

いつもふたつに結ってあった髪は今日は下ろされていて、ハニーブラウンの髪がサラサラと風に揺れている。

それに目を奪われていることに気付き、ヴァンガードはそっと視線を海へ戻した。

「あの」

「なに?」

リディルは首を傾げてヴァンガードを見る。

「貴女はどうして精霊士になろうと思ったのですか?」

その質問に、リディルはほんの少し首を傾げる。

「あ、いえ。昨日、リディルさんの話をフェイレイさんから聞いて」

「うん」

「貴女が精霊士になった理由が、分からなかったので」

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