歌姫ロンリネス

出会い②


後日。

【放課後、校門で待ってろ】

という先輩の指示に従い、中高兼用の校門で先輩を待つ。

音楽プレーヤーから流れる歌を聞きながら、口ずさむ。



「♪〜…んぐっ!」

急に口を手で塞がれて、イヤホンが取れる。

「…っ!瀬良先ぱ…っ何して……っけほ、」

先輩の手を掴み、力の抜けた手を下げる。

「何普通に歌ってんだよ。ちらちら見られてんだぞ馬鹿」

デコピンを食らった。

周りを見渡すと、軽い人だかりが出来ている。

「…うーん……、下手だからですかね…」

「教えなかったか?お前歌姫」

「あぁ、そういえば」

「あのなぁ…」

「すみません、物覚え悪くて」

「馬鹿」

デコピンを食らった。(2回目)

不思議だ。

瀬良先輩と話してるとなんだか落ち着く。
独特の雰囲気があるというか…。

「とりあえず行くか?楽器屋」

ひとしきり笑うと、先輩は言う。

「そーですね、行きましょう」

「……やっぱ敬語やめろよ」

「無理って言いましたよね?」

「悪いな、物覚え悪くて」

「チッ」

…デコピンを食らった。(3回目)
おでこを押さえながら、隣を歩く先輩を見る。

溜め息が出る程美しい。まさに瀬良先輩のことだと思う。

きっと両親も綺麗なんだろうな…なんて考えていると、駅に着いた。




< 11 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop