歌姫ロンリネス
出会い②
後日。
【放課後、校門で待ってろ】
という先輩の指示に従い、中高兼用の校門で先輩を待つ。
音楽プレーヤーから流れる歌を聞きながら、口ずさむ。
「♪〜…んぐっ!」
急に口を手で塞がれて、イヤホンが取れる。
「…っ!瀬良先ぱ…っ何して……っけほ、」
先輩の手を掴み、力の抜けた手を下げる。
「何普通に歌ってんだよ。ちらちら見られてんだぞ馬鹿」
デコピンを食らった。
周りを見渡すと、軽い人だかりが出来ている。
「…うーん……、下手だからですかね…」
「教えなかったか?お前歌姫」
「あぁ、そういえば」
「あのなぁ…」
「すみません、物覚え悪くて」
「馬鹿」
デコピンを食らった。(2回目)
不思議だ。
瀬良先輩と話してるとなんだか落ち着く。
独特の雰囲気があるというか…。
「とりあえず行くか?楽器屋」
ひとしきり笑うと、先輩は言う。
「そーですね、行きましょう」
「……やっぱ敬語やめろよ」
「無理って言いましたよね?」
「悪いな、物覚え悪くて」
「チッ」
…デコピンを食らった。(3回目)
おでこを押さえながら、隣を歩く先輩を見る。
溜め息が出る程美しい。まさに瀬良先輩のことだと思う。
きっと両親も綺麗なんだろうな…なんて考えていると、駅に着いた。