歌姫ロンリネス
「結構な有名人だよなぁ〜。
まぁ、まさかキミみたいな子だとは思わなかったけど」
爽やかに笑うその店員さんは、何かを書いている様子で。
「ゆ、有名人……ですか…」
「おう。それにキミ、いつもここ来るとそこでギター眺めてるだろ?」
ショーケースに飾られた色彩豊富なギター達に視線を移す。
「知ってたんですか?」
「何か不思議なオーラ醸し出してるからさ、覚えたんだよ」
「そうですか…」
「うん」
………
沈黙。
話しが続かない。
「で、カケ。この子連れて来たのは意味があんだよな?」
店員さんが切り出す。
「当たり前だ。こいつにギターを頼む」
「ああ、なるほど。
じゃあ、とりあえず好きなの探してみな」
そう言われ、店内にあるギターを見回す。
「これがレスポール。で、こっちがストラトキャスターな」
二つのギターを指差して、教えてくれる店員さん。
ネームプレートを発見し、名前を確認。
……【瀬良 芳樹】
セラヨシキ…。
瀬良?
「あれ、もしかして…」
「あ、俺?カケの兄貴」