歌姫ロンリネス
「うわ〜!うらやましっ!何あの優しい笑顔!」
「妹さんいいなぁ〜!」
体が、震える。
そのまま席を立ち、先輩は私の頭に手を乗せる。
嫌ってわけじゃないけど何だろう、急に。
「…妹みたいって感じじゃなくてさ……」
「……?」
「…助けてやりたくなるんだよな、お前って」
…お会計をしながら、先輩は小さく微笑んで私にそう言った。
「……っ…」
心拍数が急に上がった。
先輩の笑顔と声。誰もを魅了するその綺麗さ。
店員も男なのになぜかうっとりしている。
やめてくれ、同性愛は同人誌で充分だ。
「…あんまり、恥ずかしいこと言わないでください」
「別に本音だけど?」
「言っていいこととダメなことがあります」
「ひなたって淡々と話すよな」
「話し聞いてました?」
淡々と話すのは先輩だからかもしれない。
不思議だ、本当に。
「はぁ……」
「何だよ」
「何で私、先輩は平気なんでしょうか?」
「知るか」
―ジョンソンと、翔先輩。
この二人に出会ったことで、私の中で何かが変わっていけるような、そんな気がする。