歌姫ロンリネス

練習


C、D、E……F、

「あー…何で?」

ギターを買ってから、毎日練習している。
先輩にもたまに教えてもらいながら、コードの練習。


「Fコードが弾けないんです」

しょげながらそう言うと、先輩は笑いながら私を見る。

「…何で笑うんですか?」

お昼休み、たまたま食堂で出くわした先輩とご飯を食べていた。

「そろそろだなーと思ってたら本当に来るから」

クスクス、と笑みを浮かべながらそう言う先輩に、溜息を吐いた。

「毎日練習すれば、いつか弾けるようになる。ひなたは指が長いし、大丈夫だ」

ぽんぽん、と頭を撫でながら先輩は言う。
…馴れ馴れしいな。
失礼なのはわかってるものの、そう思ってしまう。

「あ、今の嫌だったか?」

「いえ、別に」

何で気が付くんだろうか。
細かいことにすぐ気が付いて、気を使ってくれる。

「先輩」

「ん?」

「気ぃ使わなくて結構ですよ?」

逆に気を使うんで、と付け足して笑顔を作る。

「じゃあ言うぞ?お前の作り笑顔はブスだ」

「先輩、やっぱ少しは気を使ってください」



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