愛しいライカ
「君とライカは違うよ」
隣に目をやると、彼は寝転んで目を閉じていた。
「ライカは片道切符を渡されてもう二度と地球に戻ることはできなかったわけだけど、君にはちゃんと帰る道も、家もある。少なくともライカより自由に生きてる。おれはそれだけで十分幸せだと思うけど、君は違うの?」
私は小さく俯いた。
それから青空を見上げて、昨日ハンナと一緒に歩いたあのオレンジロードを思い出した。「私…」
「私、ライカの死は無駄じゃないと思います」
そこまで言ってから私はううん、と小さく首を振った。
「無駄にしないようにします」
うん、と彼が満足そうに微笑んだ。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
「そろそろ教室に戻るか」
「あの!」
出口に向かう彼を呼び止めた。
「ありがとうございました」
頭を下げる私に、彼は背中を向けたまま親指を立てた。
「3ーC。いつでもおいで」