義
(何という大名だろう。大名とはかかる場合、庶民の扶助を受けて当然なのに。この御仁は己の命とわしや村人の命を同列に、否それ以上に思っていらっしゃる。大名は民百姓の為にとよく言うが、実際にそれを実行した大名を聞いたことが無い。例えば内府様が治部少輔様と同じ境遇に若しなっていたとしたら、迷わずわし達の命など顧みず出立しているだろう)
与次郎は改めて、三成の秀麗な容貌に見入った。
(こういう奇人ともいうべき大名は、恐らく日本はおろか唐、天竺、南蛮にも居るまい。わしらは何ともはや奇蹟としか言い様の無い大名に、治められていたのや。もう斯様な殿とは二度と御目にかかれまい)
三成は元来胃弱でスマートである。益々肉が落ち三十代にしか見えなかった外見が、四十代相応に映っている。
「わしは晒し首になろうとも、義に殉じることを誇りに思う。短い期間であったが大変世話になった。わしはここで殿中には無かった真の義に触れられた。それだけでも落延びた甲斐があった。礼を言う」
与次郎は悔し涙を溢れさせている。拭く事さえできなかった
与次郎は改めて、三成の秀麗な容貌に見入った。
(こういう奇人ともいうべき大名は、恐らく日本はおろか唐、天竺、南蛮にも居るまい。わしらは何ともはや奇蹟としか言い様の無い大名に、治められていたのや。もう斯様な殿とは二度と御目にかかれまい)
三成は元来胃弱でスマートである。益々肉が落ち三十代にしか見えなかった外見が、四十代相応に映っている。
「わしは晒し首になろうとも、義に殉じることを誇りに思う。短い期間であったが大変世話になった。わしはここで殿中には無かった真の義に触れられた。それだけでも落延びた甲斐があった。礼を言う」
与次郎は悔し涙を溢れさせている。拭く事さえできなかった