白衣を脱いでキス。
黙り込んだあたしを見て、先生は目を細めた。
「怖い?」
機械のスイッチは切ってくれたみたいで、診察室はクラシックの名前も知らない曲が流れてるだけ。
「あたし…歯医者初めてで…」
「すごいな」
機械を置くと、背もたれをあげてくれた。
「築山さん、高校生だろ?この年まで来ないって珍しいよ」
相変わらずマスクをしていて表情全体は見えなくて。
でも声と瞳が優しくて。
ドキドキしてしまった。
「…痛い、ですよね?」
少しだけ緊張が解けた。
先生のおかげかも。
「まぁね。もう少し早く来てくれてたら痛くなかったかもしれないけど」
そっか。
ならもっと早く来ればよかったな。
「今日はやめておこうか」
「へ?」
首を傾げると先生は治療用の手袋を外して、あたしの頭をくしゃっと撫でた。
「~っ」
なに??
今、心臓がありえないくらい跳ねた。
「築山さん緊張してるみたいだし、僕も無理矢理治療したくないしね」
ぱさっとマスクを外す先生。