アンガー・グラッチ・ヘイトレッド

マッドボール

真っ黒な道。

光は届かない。

そよ風程度の風が止むことは無くて、夏だというのに少し肌寒さを感じる。

と言うか、ただ照明が壊れたトンネルなのだけど。
でも風が吹く音が中で反響して、それなりの雰囲気はある。
そして、どうして俺がこんなところにいるのかと言うと、狩りをするためで。あぁでも幽霊とかじゃ無くてもっと訳の分からないヤツを相手にしてる。

トンネルの中を懐中電灯の明かりで照らして歩く。
トンネルの至るところ描いてあるスプレーのラクガキが不気味さを高めた。
「噂は本当みたいだな。」
ヤツを狩るのに重要なのは情報収集だ。闇雲に歩き回ったってその分時間の無駄になる。
今日このトンネルに来たのだって、不良グループの溜まり場になってるっていう噂を聞いたからからだ。

こういう場所はヤツが現れやすい。

「出た出た!」
暗闇の中に赤く光る二つの点。
懐中電灯で照すと、バスケットボールくらいの大きさの黒くて丸い物体がキザギサの牙を剥き出しにしてこっちを向いていた。
「おーおー!やる気満々じゃん?」
真っ黒に塗った、お手製の釘バット2号を取り出した。
1号の失敗を踏まえて新しく作った渾身の一作。
釘を打ち込んだのはただの木製バットじゃ見た目が弱そうだったから。リーチを伸ばそうとか、破壊力を上げようとか考えてたわけじゃない。色のだってそうだ。ただの見た目の問題。
おかげで、最高にダークでマッドでブラックに仕上がった。
戦法は…バットで殴りつけるだけ。

ピンチの時は…振り回すだけ。

玉を打つ。

色と大きさが違うだけ。

「プレイボール!ってね…。」
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