アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
しばらく狩りはお預け。
恐くなったんじゃない。
準備期間なのだ。
いろんなスポーツ用品店に通って実際にバットを握って重さを確かめたりして自分に合ったバットを買った。
ホームセンターで黒色のスプレー、釘。
いつもバイクを改造したり手入れするのに使っている車庫で釘バットを作る。
前回の失敗を踏まえての釘バット2号の作成は試行錯誤だ。
対マッドボール用というよりはあの女との戦闘用に仕上がっている。軽くて丈夫で黒くて釘もそこそこ刺さっている。
「出来た。」
実戦で使うのが勿体無いくらいに良い仕上がりだ。
バイクのパーツに埋もれている目覚まし時計で時間を見ると深夜12時を回って、5分13秒過ぎたとこだった。
久しぶりに狩に出てみるか。とも思ったけど、集中して作ったからかなり疲れた。
「(明日にするか…。いや、やっぱり行こう。)」
俺の悪い癖がでる。
バイクの改造したあとも疲れてるくせに効果を試したくなる。今も疲れより新しい釘バットの威力を試したい気持ちの方が勝ってる。
そうと決めたら車庫のシャッターを押し上げて、釘バットを背負って、お気に入りのフレアパターンの半キャップのヘルメットはこの前どっかに落として、見つからないから通学用のフルフェイスのヘルメットをしぶしぶ被ってバイクに乗って家を出た。
深夜徘徊で警察に歩道されちゃうかな?とか考えながらあるトンネルに向かう。準備期間中に調べた、マッドボールが集まりそうな場所。何でも夜な夜な不良グループが集会を開いているとか。
目的のトンネルに着いた。旧道を走ってきたから思ったよりも遠出になった。
「不気味なトンネルだな。」
あまり大きく無いトンネルは電気が点いてなくて、奥まで暗闇が続いている。薄く霧も立ち込めていて、薄暗い月の明かりに霧が照らされている様子はまるでトンネルが暗闇を吐き出している様に見えた。
「よくこんな不気味なとこで集まる気になるなぁ。オカルトグループの間違いじゃねぇのか?」
実はマッドボールより不良どもと戦う事の方を望んでいる自分がいた。
もう一度言うけど、恐くなったんじゃない。
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