アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
彼女は恐ろしい速さで急接近し、竹刀を喉元に突きつけてきた。
「アンタの目的は何!?クロちゃんを使って何を企んでるの!?」
竹刀を喉に押し付けられて咳き込みそうになる。
「俺はただ…、」
と、俺達がさっきまで攻防を繰り広げていた休憩室の方から、嫌な雰囲気の低い唸り声のようなものが聞こえてきた。
俺達は同時に声の方を振り向いた。
「なんかヤバそうじゃねぇ?」
「アンタが仕組んだんでしょ!?」
「だから俺はただ…!」言いかけたとこで休憩室から黒い何かが迫って来た。「とりあえず今はケンカは無しだ!アイツを何とかしないと!」
彼女は俺を睨んだが仕方無いといった様子で舌打ちしてから解放してくれた。喉をさすりながら立ち上がると、彼女が「来たわよ!」と言いながら竹刀を構えた。
目の前に現れたソイツは今までのマッドボール(彼女はクロちゃんと呼んでいる。)とは違い人型だ。黒いモヤモヤってところは変わりは無いけど、ガス人間と言うかこれだと亡霊と言った方が近い。
「うっわ。気味が悪いのが出てきやがったな。」
彼女は見下す一歩手前の表情で俺を睨みながら鼻で笑う。
「アンタの協力なんかいらないわ!」
そう言って威勢良く斬り込んでいった。
アレは斬れるのか?
そんな疑問を抱きながら俺もまた彼女に続いた。
2人の攻撃が交互に繰り出される。が、びくともしない。
と言うより。
手応えが無い。
そんな中で今度はヤツがそのモヤモヤの右腕を俺たち2人まとめて狙って、振ってきた。
ぶんっ、と。
単純に腕を横に振ったのだが、さすがモヤモヤで出来てるだけあり俺をすっぽりと覆ってしまうくらいに腕全体が膨れ上がったのだ。
これにはたまらず俺も彼女も転がって避けるしか無かった。
ががが、と。危険な音を立てながらのコンクリートの床が削れる。
さっきまですかすかで全くダメージを与えられなかったヤツの体が攻撃の時だけは脅威的な固さになり、同時に驚異的な破壊力を持つ。
粉塵が舞うなかで、さてどうするか?と顔を見合わせる。
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