アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
強気な返事をした俺だが、実際には大きめの破片が腕に当たり、じんじんと痛んでいた。
「ちっくしょ。強いじゃねぇかコノヤロー…。」
さっきので分かったのは膨張している部分に攻撃しても固すぎてまるで歯が立たないということだ。なので今度は膨張していない部分に攻撃してみる。
通常の状態だと攻撃してもダメだったが、ヤツが彼女に攻撃して注意が彼女に向いていればダメージを与えられるんじゃないんだろうか?
予想でしかないけど、これいがいに別のやり方なんて存在しないだろうし。
痛む腕を擦りながら彼女が作り出す攻撃のチャンスを待つ。
そのチャンスはすぐに訪れた。ヤツが攻撃の動作に入るのを見計らって接近し頭部めがけて叩き込む。攻撃には確かな手応えがあり、先の一撃が効いたのか彼女を凪ぎ払おうとしていた巨大な手の動きが止まった。ここぞとばかりにフルスイングの一撃をお見舞いしてやった。
どすーん。と、ヤツは前のめりに倒れて巨大な左手が埃を巻き上げた。
すると黒いモヤモヤが煙になって消え、さっき倒した不良の1人が仰向けに横たわっていた。
終った。
だが、もう一つ。
彼女と戦うつもりがとんでもない邪魔が入ってきやがった。まぁこれはこれで面白かったから邪魔は言い過ぎか。
「人が完全にクロちゃんに乗っ取られるとああなるのね。スカスカだったから人が取り込まれてるなんて夢にも思わなかったわ。」
彼女は俺にお疲れさまの一言も無しに分析を始めやがった。すごい情熱というか、明らかに俺とは違う目的を持っているんだなってのが分かる。
どうやら片付いたみたいだな。そう俺が言うと、あぁそう言えば居たわね。といった様子で顔を向けた。
「これでやっと決着がつけれるな。」
俺がバットを構えると、彼女があの鋭い眼差しで俺を睨む。
「いいわ!アンタがどういうつもりでアタシを付け狙うのか知らないけど、アンタが望むなら相手をしてあげる。」
彼女も竹刀を構えた。
何もかもが止まったように静かになる。
まばたき一回分の静寂の後お互いが同時にお互いに向かって走る。
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