アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
や…めて
今の叫びは声になっただろうか?
「しおり。」
その、少女を呼ぶ声はゆっくりと近づいて来ている。
コワイ…。
その声が恐くてたまらなかった。
懐かしくて…好きなはずなのに…。今はただただ恐怖でしかない。
近づいて欲しくない。
無力な少女は目を閉じる事も出来ず、ソファーの裏で縮こまり頭を抱えて震えることしか出来なかった。
「詩織?」
離れたくて仕方ない。耳を引きちぎりたいとさえ思った。
だけど、その声の主は
「詩織…見つけたよ。」
少女の目の前に存在した。
愛情の笑顔なのか?殺意の笑顔なのか?少女にはそれを区別する術は無かったし、そもそもそんな事を考える心の余裕は無かった。
実の兄がついさっき母親を貫いた包丁を手に持って、目の前に立っているのだ。
これは夢だ。
悪い夢だ。
夢じゃないとダメだ。
「詩織…。」
届かぬ願いでしかなかった。
兄は…自分を突き刺した。そして笑顔のまま…ゆっくりと…崩れるように…少女に倒れこんだ。
兄は…少女を殺すより、もっと恐ろしい方法で少女を殺した。
兄は…いや違う、「声の主」は、だ。これを行ったのは兄では無く、兄の「中にいるモノ」そう思うしか無かった。
そう信じるしか少女には無かった。
しかし次の瞬間アレを見た時、願いは確信に変わった。
にやりと禍々しく笑う黒い球を。
この時少女は深い悲しみを負ったが同時にある使命を自分に背負わせることに決める。
「あのクロを全部殺す。」少女はそれから暫くうわ言のように繰り返し呟いていた。
「アノクロヲゼンブコロス」
その光景を
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
見ていた。
見せられていた。
目を閉じても目の前から消えない。
涙はとっくに枯れていた。
また最初から。
虚ろなアタシに。
これはもう無意味だ。
アタシはとうの昔に戦意を失っていた。
勝てない。
いや、最初から勝とうとすら思っていなかったのかも知れない。
結局アタシは何をしたかったんだろう?
「詩織」
まただ。
「詩織ちゃん」
…ちゃん?
「詩織ちゃん!?」
この声は──!
今の叫びは声になっただろうか?
「しおり。」
その、少女を呼ぶ声はゆっくりと近づいて来ている。
コワイ…。
その声が恐くてたまらなかった。
懐かしくて…好きなはずなのに…。今はただただ恐怖でしかない。
近づいて欲しくない。
無力な少女は目を閉じる事も出来ず、ソファーの裏で縮こまり頭を抱えて震えることしか出来なかった。
「詩織?」
離れたくて仕方ない。耳を引きちぎりたいとさえ思った。
だけど、その声の主は
「詩織…見つけたよ。」
少女の目の前に存在した。
愛情の笑顔なのか?殺意の笑顔なのか?少女にはそれを区別する術は無かったし、そもそもそんな事を考える心の余裕は無かった。
実の兄がついさっき母親を貫いた包丁を手に持って、目の前に立っているのだ。
これは夢だ。
悪い夢だ。
夢じゃないとダメだ。
「詩織…。」
届かぬ願いでしかなかった。
兄は…自分を突き刺した。そして笑顔のまま…ゆっくりと…崩れるように…少女に倒れこんだ。
兄は…少女を殺すより、もっと恐ろしい方法で少女を殺した。
兄は…いや違う、「声の主」は、だ。これを行ったのは兄では無く、兄の「中にいるモノ」そう思うしか無かった。
そう信じるしか少女には無かった。
しかし次の瞬間アレを見た時、願いは確信に変わった。
にやりと禍々しく笑う黒い球を。
この時少女は深い悲しみを負ったが同時にある使命を自分に背負わせることに決める。
「あのクロを全部殺す。」少女はそれから暫くうわ言のように繰り返し呟いていた。
「アノクロヲゼンブコロス」
その光景を
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
見ていた。
見せられていた。
目を閉じても目の前から消えない。
涙はとっくに枯れていた。
また最初から。
虚ろなアタシに。
これはもう無意味だ。
アタシはとうの昔に戦意を失っていた。
勝てない。
いや、最初から勝とうとすら思っていなかったのかも知れない。
結局アタシは何をしたかったんだろう?
「詩織」
まただ。
「詩織ちゃん」
…ちゃん?
「詩織ちゃん!?」
この声は──!