アンガー・グラッチ・ヘイトレッド

決戦!

「お、おい…!あれ何だよ!?」
とある学校の学生服に身を包んだ男が指差した上空には、雲に隠れて薄く光る太陽と並んで黒い球体が浮かんでいた。
「皆既日食…じゃねぇよな…?」
と、雲に隠れていた太陽が顔を出しまばゆい光りが人々の視線を遮り黒い球体は光の中に消えた。
そして太陽が再び雲に隠れて黒い球体が見えるようになったとき黒い球体は誰の目にも明らかに大きくなっていた。
「つーかさ…近付いてきてねぇ?」
「いや、でかくなってるだけだろ?」
「ちげーよ!両方だよ!」
街のあちこちでこれと似たようなざわめきが起こり、このざわめきを目指すように黒い球体は音も無く地上に向かって近付いていた。黒い球体からはそれが地上に近づく速度よりもはるかに速く無数の黒い手が地上に伸びた。
その瞬間から「驚き」「不思議」「興味」は誰の目にも明らかな「球体」で「黒」で「恐怖」に変わった。
街の至るところから発せられる恐怖の叫び声。
人々は咄嗟に身構えた。走り出す人もいた。呆然と立ち尽くしていた人もいた。
が、どれもこれも意味をなさなかった。
地上から見上げたとき黒い手は小さな点だったが目の前に迫ったときの黒い手は遥かに大きなものだったからだ。人々の身体を軽々と鷲掴みしてしまうくらいに。
黒い手は文字通り有無を言わさずに人々をさらい、本体である黒い球体に取り込んでいった。

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