会えない時間



それからその場から動けなくて。

座り込んだままずっと泣いてた。


“ピンポーン”


今の私の心情には似合わないほど明るい音でインターホンが鳴った。

時計は夜の9時。

秀紀さんと電話をしてから1時間以上が経っていた。

こんな時間に誰だろう…。

泣きすぎたせいで痛む頭を抑えながら腰を上げて玄関に向かう。

覗き穴を見ると、思わず目を疑ってしまった。

ドアの前にいたのは珍しく息を切らせて肩を上下させてる秀紀さん。


「麻耶、そこにいるんだろう?話しよう」


あくまで優しい声の秀紀さん。

ドアに背中を預けてしゃがみこむ。


「…」


やだ。

別れ話なんて聞きたくない。

開けてしまったら全部が終わっちゃう気がした。



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