会えない時間
黙り込んでいると、ドアの外側からコツンと音がした。
「麻耶、お願いだから開けて」
掠れた声。
ズルイよ。
私はこの声に逆らえないのに。
静かにチェーンを開けて、鍵を開ける。
すぐにドアノブが回って、秀紀さんが入ってきた。
「…秀紀さん」
止まった涙がまた溢れ出す頃には秀紀さんの腕の中にいた。
玄関先で抱きしめられるなんて初めてだ。
こんなに長い時間、抱きしめられたのも初めてかもしれない。
「…麻耶」
頬を両手で包まれて顔を上げさせられた。
目と目が合って。
切ない瞳の秀紀さんに胸がギュッと締め付けられた。