小春日和
「…んっ」

近くに人の気配を感じて、眼を覚ました。

「あっ、起きた?」

「えっ…?」

一気に頭の中の霧が晴れた。

眼をパッチリ開き、起き上がると、

「わっ!?」

「おはよう。良く眠ってたね」

いっいつの間にか、隣に見知らぬ青年がいた!

だっ誰だ?

じぃ~っと見ても、見覚えがない。

…つまり、知らない人だ。

知らない人に、多分長時間、寝顔を見られていたワケで…。

カァー カァー

…頭上では、夕日に向かって飛んでいるカラスが鳴いていた。

カラスが鳴いたのなら…帰ろう!

「しっ失礼します!」

カバンを引っ掴み、駆け出したアタシ。

「あっ、ちょっと!」

寝起きとは思えない動きで、アタシはそのまま家の中まで走った。

「ぜぇーぜぇー…」

自分の部屋に着くと、床にバッタリ倒れた。

はっ恥ずかしい…。

見知らぬ青年に、寝顔を見られ続けていたなんて…。

…思い出してみると、青年は結構美形だったな。

多分20歳そこそこ。見た目は遊んでいそうなカンジもしたけど、好青年っぽい。

そんな人に寝顔を見られていたなんて…。

赤っ恥もいいところだ。

しかしあの人も、大人しく座っているだけじゃなくて、せめて声をかけてくれたらよかったのにっ!

…声をかけるのを躊躇うほど、爆睡しているように見えたんだろうか?

「まっまあ、どうせもう会わないだろうし!」

そう自分に言いきかせ、アタシは復活した。

今度から外の昼寝は控えるようにしようと、心に決めて。
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