小春日和
「笑うところじゃないと思うんだけど」

「まっ、オレは寝ているキミに一目惚れだったワケだし? 本当はオレ以外に寝顔を見せたくないってのが本音だし」

「…それって付き合うことが前提で言ってない?」

「えっ? ダメ? オレ、自分で言うのもなんだけど、損させない自信あるよ?」

心底意外そうな顔をする青年に、アタシは思いっきり深くため息をついて見せた。

「まあ…良いケド」

「マジ?」

「自分で聞いといて、何、その顔?」

「いっいやぁ、本当にOKしてくれるとは思わなかったからさ」

気恥ずかしそうに頭をかく青年。

…アタシばかり恥ずかしい思いをしているので、ちょっと優越感。

「でもさ、ちょっと立ってみてよ」

「あっ、うん」

青年は立つと、かなり身長が高かった。

細身なのに、長身。

アタシは女子中学生としては、ちょっと小柄だ。

立ち上がると、青年の胸ぐらいしかない。

「…身長、高いのね」

「まっ、ね」

肩を竦める青年に、思いきって抱きついてみた。

「わっ! どっどうかした?」

…この身長さでは、兄妹に見られるだろうな。

「今日から毎日牛乳飲んで、ストレッチして…」

「何で?」

アタシを抱き締めてくれながら、不思議そうな青年の声が上から降ってくる。

「アナタにつりあう女になる為よ!」

顔を真っ赤にして怒鳴るアタシを見て、青年は笑った。

「ははっ。じっくり待つよ。待つのはキライじゃないし」

そう言って抱き上げてくれた青年に、力いっぱい抱きついた。

このあたたなぬくもりを離さぬよう…。

小春日和のような彼に、心惹かれている自分に気付いた。
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