「こころの音」
ゆうこは賢明に残された父親の看病に勤しんだ。
食事を全く受け付けないので、点滴だけでいくらか動ける…
「大丈夫…?何かしてほしいことない?」
、
「散々ゆうこに迷惑かけて、最後も迷惑かけて…本当に…申し訳ないと思ってるよ…」
「そんなことないよ、母親が居なかった時、一生懸命親として私の面倒を見てくれたじゃない?」
「高校も行かせてやれなかったしな…」
「もういいよ…そんなこと…早く大人になりたいって思ってたから…」
そんな会話しながら、父親は泣いていた……
吐血を繰り返し、それから二週間後に父親は他界した…
変わり果てた姿だったが、いつまでも父親の頬をなでていた…
ゆうこはものすごく孤独感を味わっていた。
高校に行かれないと知って父親を憎んで、家出した事ももう懐かしい出来事…
親子三人で見た美しいれんげ畑…
無理に仕事休んで授業参観に来てくれた…
不器用ながら、ゆうこの事を愛してくれていたのかもしれないと、今になって思う。
ずっとずっと元気で生きててほしかった…
親の死……こんなにも辛いのか…
あんなになるまでほっといた体は、どんなに苦しく辛かった事だろう……
それまで誰にも言わないで……
ゆうこは父親の死から、なかなか立ち直れず、ふさぎ込んでいた……
ひろみともあまり会う気分じゃなかった…
食事もとれず、みるみる痩せた。
久しぶりに尋ねてきたひろみが心配して、
「皆いつかは死ぬんだよ。それが早いか遅いかだけ…ゆうこのお父さんだって、辛くても最後まで頑張ったじゃない!ゆうこがこんなんでどうするの?」
「わかってるけど、涙があふれてきちゃうんだよ…」
「ゆうこ、お父さんの分まで頑張ろうよ!」
「うん、頑張るよ…」
ひろみが泣きながらゆうこを抱き締めた。
わんわん泣いていた。