「こころの音」


懸命にゆうこは立ち直ろうと頑張った。

会社でも仕事を頑張り、ひろみとも遊びに行ったり、充実していた。

ひろみの学校の男友達と皆で出掛けたり、ゆうこは高校には行けなかったけど、ひろみが楽しみを与えてくれた。


なかには、ゆうこを気に入ってる態度のまこと君が居たり、遊びに行ってても楽しく過ごせるようになっていた。

「ゆうこ、まこと君のことどう思う?」

「どうって…見た目はかっこいいね!」

「まこと君、ゆうこに気がある感じだよね~」

「うん、そんな感じは何となくするけど~
それより、ひろみはどうなのよ~?好きな人とか居ないの?」

「いるけど…彼女がいるんだよね…だから、遠くから見てる…」

「仕方ないか…」

そんな楽しい生活が続き、皆がゆうこの部屋にも遊びに来たり、出かけたり、少しずつだけど、ゆうこもまこと君の事を好きになり始めていた。

(まこと君と付き合えば、とおるの事すっきり忘れられるのかな…)

でも、やっぱり勇気が無くて、ゆうこは踏み込めないでいた…





ある日、ゆうことひろみが買い物の途中食事をしていて、

「最近また食欲なくて…」

「どうしたんだろうね?病院行ってみたら?」
ひろみが心配して言った。

「そうだね、なんか食物が詰まる感じがしてね…まぁひまみて病院行ってみるわ」



それから調子が一層悪くなって、一ヵ月ぐらいたったころ、病院に向かった。



いろいろ検査して…
また結果聞きに行って…



医師が、
「今の状態を、きちんと説明したいので、ご両親か肉親の方と一緒に来てもらえますか?」

「私、両親いないんです…そんなに悪いんですか?」

「……」

「肉親は誰もいないので、直接教えて下さい…」


「実は……本人には大変いいずらい事ですが、末期に近い胃ガンです…すぐ入院して下さい」



「……えっ!?そんな………昨年父が末期の胃ガンで亡くなったばかりなのに……」


調子が悪くなってから、あっという間の出来事だった…



もうゆうこは冷静だった。


こんな時なのに、いつものこころの奥で聞こえる音はもう聞こえなかった……


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