「こころの音」
ゆうこは学校では普通に過ごしていた。
友達もすぐできたし…給食が食べられる。
でも、ほとんどお昼しか食べていなかったゆうこは、朝よく貧血で倒れて、保健室で寝ていた…

ある日も倒れて…
担任の先生に保健室に連れていってもらった時、うちの事情を知ってるようで、先生はゆうこの両手を痛いぐらい、ギュッとにぎり、ゆうこの目を見つめ、少し先生の目がうるんでいた。
言葉はなかった…

その後、先生はゆうこの肩を抱き寄せ、抱き締めた。
私の家の状況が何もかわるわけもなかったが、今はただただ、先生の暖かな胸の中で甘えていたかった…

ゆうこが学校から帰ってくると、家には誰も居なかった。

(あんな酔っ払ってるのに、どこに行ったんだろう…)

夕方になっても帰ってくる気配もなく……


それからずっと母親は帰ってこなかった。


学校では、母親が居ない事をきづかれまいと、普通にふるまった。

当分、父親と二人の生活が始まった。

「いつも辛い思いさせて済まない…」
と父親はぽつり…と言った。

二人の生活は充実していた。
ふびんに思っているのか、よく車で出掛けた。

会話はあまりないが、普通の父子家庭の感じで、ゆうこの心は満たされていた。

授業参観には、仕事を休んで観にきてくれた。

父親が授業参観に来ているのは、ゆうこの家だけだったが、ゆうこの心には、後々、忘れられない、親としての愛情を感じるでき事の一つになった……


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